
腸セラピー資格講座・大阪代表の江口です。
腸セラピー(腸もみ)は、近年の腸活ブームの影響もあり、自律神経を整える効果や便通改善などを目指す施術として広がっています。
しかし、高血圧や心臓病(心疾患)をお持ちの方にとっては注意が必要であり、禁忌にあたる場合があります。
さらに、当スクールで指導している腸セラピーの手技は、あくまでリラクゼーションサロン向けの施術であるため、高血圧や心臓病を抱える方への施術は一切行わないよう禁止しています。
そこで今回は、【危険】高血圧・心臓病の方への腸セラピーとは|腸セラピーの禁忌と題して、その背景にある体の仕組みと注意点について、一般の方にもわかりやすく解説していきます。
かんたん解説:腸セラピーの禁忌
■どんな人にやってはいけない?
「高血圧の人」「心臓の病気がある人」「心臓手術を受けて日が浅い人」は、腸セラピーを含む整体やマッサージ等の施術を受けないか、受けるとしても細心の注意が必要です。
これは多く店舗が採用している“基本ルール”です。当スクールでは禁止しています。
■なぜ?(理由)
整体マッサージ等の施術は、血流や血圧を変化させることがあるため、心臓や血管に負担がかかる恐れがあります。
とくに強い圧(ぐっと深く押す刺激)はリスクが上がるので避けるべき、という指摘があります。
<参考>
2.手技に関する遵守事項
(1)施術における禁止行為
①リラクゼーションは、「医行為」・「医業類似行為」を行うものではない。
たとえば、以下 は特に問題となりやすい行為のため禁止する。
- 瞬間的に強く圧力をかける手技(厚生労働省の指導による危険行為として禁止する)
- 骨格矯正、脊椎に対するスラスト・アジャスト施術(厚生労働省の指導による危険行 為として禁止する)
- 外傷を残す行為(医師法17条による外科的手術行為に該当するため禁止する)
→ リラクゼーション業界における ヘルスケアサービス品質向上に向けた 自主ガイドライン
生理学的な仕組み
1. マッサージと血流の変化
- マッサージは皮膚や筋肉を圧迫・摩擦することで、血管が一時的に圧迫され、離したときに血液が流れ込みやすくなる(充血反応)仕組みがあります。
- また、筋肉内の血管はマッサージで緩むと血管径が拡張し、血流量が増えることが知られています。
- 結果として、施術部位だけでなく全身の循環動態にも影響を及ぼす可能性があります。
2. マッサージと血圧の変動
- 交感神経と副交感神経 マッサージはリラックス効果で副交感神経が優位になりやすく、血管拡張が起き、血圧が下がることがあります。
- 一方で、強い圧や痛みを伴う刺激は交感神経を刺激し、血管収縮や一時的な血圧上昇を招く場合があります。
- 実際の研究でも、ソフトマッサージは血圧低下に寄与した一方、トリガーポイントのような強圧刺激は血圧を上げた例が報告されています。(参考サイト)
3. 心臓や血管への負担の仕組み
- 心臓への影響:心臓は血液を送り出すポンプです。血圧が急に変動すると、心臓はそれに応じて強く拍動しなければならず、特に心臓が弱っている人(心不全、狭心症など)では大きな負担になります。
- 血管への影響:高血圧や動脈硬化があると血管壁は弱くなっています。そこに血流変化や圧力変動が加わると、血管の損傷や血栓リスクにつながる可能性があります。
- 大動脈の圧迫リスク:腸セラピー(腸もみ)などの腹部の施術では、大動脈(心臓から全身へ血液を送る最も大きな血管)が圧迫される部位に近いため、深部に強い圧がかかると心臓・血管系に直接的なストレスとなり得ます。
つまり、リラクゼーションサロン・整体院・マッサージ店での施術は「筋肉をほぐす → 血管が拡張・収縮する → 血流や血圧が変動する」という流れを通じて、心臓や血管系に一時的な負担をかける可能性があるということです。
腸セラピー(腸もみ)の研究ではない
今回の内容は“腹部だけ”を対象にした腸セラピー(腸もみ)の研究ではありません。
ただし、血流や循環器に影響しうるという観点から、お腹の施術にもそのまま当てはめて慎重に考えるのが安全です。
それでも施術を受けたい方へ
私(江口)が調べた限りでは、厚生労働省が「高血圧や心臓病を持つ患者にマッサージをしてよいか、あるいは禁止すべきか」について明確に示した資料は見つかりませんでした。
ましてや、腸セラピー(腸もみ)に関する公式な見解や資料は存在していません。
英国心臓協会(BHF)は、心臓病がある人はまず主治医に確認し、OKが出たとしてもやさしい手技に限定するよう呼びかけています。(WEBサイト)
日本国内で施術を受ける場合でも、まずは主治医に確認し、許可を得たうえでリラクゼーションサロンに施術が可能かどうかを問い合わせてください。
サロン経営者がやるべきこと
サロンをご利用いただく際の注意点として、禁忌リストに「高血圧」「心臓病」「手術後まもない方」などを明記しておきましょう。
また、サロン経営者はホームページやSNSに「ご予約の前に」「当店のご利用方法」といったページを設け、施術を受けられない方(禁忌リスト)を事前に確認していただけるような導線を整えてください。
勤務セラピストが注意すること
ご来店のお客様は、禁忌事項を把握していない可能性があります。
セラピストは、高血圧・心臓病をはじめ、病歴・服薬・体調をできちんと聞き取り、安全に配慮する義務があります。
責任問題
リラクゼーションサロンや整体・マッサージ店などの施術は、医療行為ではなく「サービス提供」にあたります。
ただし、お客様に身体的影響を及ぼす可能性があるため、リスクや禁忌について説明する義務がサロン側に生じます。
施術内容を説明して同意書をいただいていたとしても、施術中や施術後に体調の異変が生じた場合には、「業務上過失」とみなされ、賠償責任を負う可能性があります。
自分の血圧(数値)を把握していない方
長い間病院に行っておらず、自分の血圧を把握していないお客様も少なくありません。
不安や心配がある場合は、施術時間を短めにする、刺激をソフトにする、そして体調に少しでも異変を感じたらすぐに伝えていただくなど、柔軟な対応が大切です。
(当スクールでは30分以内の施術を推奨しています)
サロンに自動血圧計を設置しているケースは少ないですが、高齢のお客様を対象とするサロンでは導入しておくと安心感につながるでしょう。
1. 年齢と血圧の関係
加齢とともに血圧は上がりやすい 年を重ねると血管の弾力(柔らかさ)が失われ、動脈硬化が進行します。
その結果、収縮期血圧(上の血圧)が上がりやすくなる傾向があります。
日本高血圧学会のガイドラインによると、特に40歳以降から徐々に上がり、50代以降で高血圧の割合が急増するとされています。
2. 年齢ごとの特徴
・若年期(20〜30代)
血圧は比較的安定しているが、肥満、ストレス、塩分過多など生活習慣によって早くから高血圧を発症する人もいます。
・中年期(40〜50代)
動脈のしなやかさが減少し、特に「上の血圧(収縮期血圧)」が上がりやすくなります。
メタボリックシンドロームや生活習慣病が発症しやすい時期。
・高齢期(60代以降)
動脈硬化が進み、収縮期高血圧(上は高いのに下は正常〜低め)が増加します。
日本人の高血圧有病率は60代以降で男女ともに50%を超えるといわれます。
3. 血圧上昇に影響する要因
- 加齢(最大の要因)
- 生活習慣(塩分摂取、飲酒、運動不足、肥満)
- ストレスや交感神経優位(精神的緊張、強い痛み、急な刺激でも一時的に上がる)
- 遺伝的体質(家族歴があると高血圧になりやすい)
4. マッサージ等の施術と年齢の関係
- 若年〜中年では自律神経の反応が強く、一時的に「交感神経が優位 → 血圧が上がる」反応が出やすいケースがあります。
- 高齢者は血管が硬くなっており、急な血圧変動が脳や心臓に影響しやすいため、強い刺激は特に注意が必要です。
まとめ:高血圧・心臓病の方への腸セラピーの危険性と対応方法
腸セラピーは、自律神経の安定や体質改善をサポートする素晴らしい技術です。
しかし、その一方で「施術してはいけないケース(禁忌)」が存在します。
とくに 高血圧や心臓病など循環器系にリスクを抱える方 への施術は、必ず避けなければなりません。
最後に今回のまとめ「高血圧・心臓病の方への腸セラピーの危険性と対応方法」をご確認ください。
腸セラピー施術禁止の理由
- 当スクールはリラクゼーション向け手技のため、高血圧・心疾患の方への施術を禁止。
- 多くの業界ガイドラインでも「高血圧・心臓病・心臓手術後まもない方」は禁忌として扱われる。
危険の仕組み
- マッサージは血管を圧迫・緩解させ、血流(充血反応)を変化させる。
- 軽い施術 → 副交感神経優位 → 血管拡張 → 血圧低下のことも。
- 強圧刺激 → 交感神経優位 → 血管収縮 → 血圧上昇・心負担のリスク。
- 腹部は大動脈が走行。深部の強い圧は心臓・血管系への直接ストレスになり得る。
研究・ガイドラインの見解
- ソフトマッサージで血圧低下の報告あり。
- 強いトリガーポイント刺激で血圧上昇の報告もあり。
- 英国心臓協会:心疾患のある人は主治医に確認し、やさしい手技に限定。
- 厚労関連ガイド:瞬間的強圧・骨格矯正など危険行為は禁止。
年齢と血圧の関係
- 加齢で血管弾力が低下し、血圧は上がりやすい。
- 40代以降で上昇傾向、50代で急増、60代以上は有病率が高い。
- 高齢者は血圧変動に弱く、強刺激は特に注意。
サロン運営者・セラピストの注意点
- 禁忌リストに「高血圧・心臓病・手術直後」を明記。
- HPや予約ページで施術対象外を事前周知する導線を設置。
- 病歴・服薬・体調をしっかり聴取(カウンセリング)。
- 自動血圧計の導入は高齢者への安心感につながる。
リスク管理と責任
- リラクゼーション施術でもリスク説明義務がある。
- 同意書があっても体調悪化時は業務上過失と見なされる可能性。
不安がある場合の対応
- 施術は短時間・ソフトに限定(当スクールは30分以内を推奨)。
- 体調の異変を感じたらすぐ中止し申し出てもらう。
腸セラピストの皆さまへ
腸は心臓からつながる大動脈が通る部位でもあり、強い圧をかけることは心臓や血管に直接負担を与える可能性があります。
安易に「お腹のマッサージだから大丈夫」と考えるのは危険です。
すでに資格を持つ方は、施術の安全性を第一に考え、必ずカウンセリングでお客様の健康状態を確認してください。
病歴や服薬をきちんと聞き取り、少しでも不安があれば「施術を控える」判断も必要です。
これから学ぶ方にとっても、腸セラピーは「癒しの技術」であると同時に、「責任あるケア」であることを忘れないでください。
私たちセラピストは、お客様の身体に直接触れる仕事です。
だからこそ、リスクを正しく理解し、安全な範囲で施術を行うことが信頼につながります。
どうか「安心・安全」を最優先に、腸セラピストとして誇りを持って活動してください。
このブログの執筆者
腸セラピー資格講座・大阪講師

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